
作品あらすじ
「ヤドカリ夫婦」真庭骨丸・作
妻がヤドカリになった日、夫は名探偵を訪ねたーー結婚して十年。ある日、夫婦のあいだに深刻な溝が生まれる。妻はヤドカリの研究に没頭し、会話のほとんどがヤドカリの話になってしまう。夫はそれに戸惑い、次第に二人の関係はぎくしゃくしていく。互いに相手を理解しようとしているはずなのに、言葉はすれ違い、感情はかみ合わない。夫婦の対話を通して、人が何かを「愛する」とはどういうことなのかが静かに問いかけられていく。奇妙でありながらどこか現実的な、夫婦のすれ違いを描いた物語。
「鎖を解く風」森かくり・作
彼女を救ったはずの愛は、やがて彼自身を縛り始めるーー平凡な書記官トムは、仕事を通じて気品ある女性マーガレットと出会う。彼女にはすでに婚約者がいるが、その結婚は家の事情によるもので、愛情のない関係だった。彼女の境遇を知ったトムは、次第に「彼女を救いたい」という思いに駆られていく。やがて彼は、自らの立場を越えた行動に踏み出すことになる。救済への願い、恋慕、そして独占欲。愛によって人は誰かを解き放つことができるのか、それとも新たな鎖を生むのか。歪んだ愛の行方を描く物語。
「破局の一手」安田智也・作
およそ人の主という者は、友など持てぬーー戦国の世。山門彦右衛門は主家の命を受け、合戦の只中に身を置いていた。敵味方の思惑が複雑に絡み合うなか、戦の行方は一瞬の判断と策によって大きく変わろうとしている。主君への忠義を胸に、彦右衛門は命令に従い戦場へと進むが、その背後では武将たちの駆け引きが静かに進んでいた。戦場で交わされる策と策、そして武士の覚悟。歴史の影に埋もれた一戦を、ひとりの武士の視点から描く戦国軍記風の物語。
「老莱子」香川まこと・作
孝行者が抱いた小さな野心ーー古代中国の説話に名を残す老莱子。老いた両親に仕える孝行者として知られる彼には、彼は時に天を読み、時に神と向き合いながら、自らの運命と栄達を切り開こうとしていく。美徳として語られてきた物語の影に、人の欲望と野心が静かに姿を現す。古典説話を新たな視点から描く歴史幻想譚。
「唾棄すべきものについて」水泰惺・作
人が思わず目を背けたくなるもの、口にするのも憚られるもの――。本作は、そうした「唾棄すべきもの」を真正面から見つめ直している。社会や道徳が押し込めてきた感情や欲望、そして人間の奥底に潜む衝動を、鋭くも静かな言葉で掬い上げていく。嫌悪と魅惑、純粋さと醜さが交差するその瞬間、人は自らの内面と向き合わざるを得なくなる。読む者に不快と問いを同時に投げかける、挑発的な一篇。
「唖教」歩理詞
ヤツは何処だ!!アレクサンドルは何処にいる!!?ーー世界を震撼させた「唖教事件」。その真相を追うため、ある記者は事件に関わった人物への取材を続けていた。唖教とは何だったのか。なぜ多くの少年少女たちは教団へと引き寄せられ、社会を揺るがす運動へと発展していったのか。取材の中で語られるのは、天才的な少女、謎めいた教祖、そして世界の知識や秩序そのものに疑問を抱いた子供たちの思想だった。理想、狂気、革命の境界が曖昧になっていく中で、「唖教」という思想の輪郭が徐々に浮かび上がっていく。
「僕と犬と三日間の旅路」西瓜彗星光
几帳面すぎる「僕」は、家族のだらしなさや日常の些細な出来事に強い違和感を覚えながら暮らしている。ある出来事をきっかけに、僕は犬とともに不思議な三日間の旅へと足を踏み入れる。現実とも夢ともつかない場所をさまよいながら、僕は犬と語り合い、世界の仕組みや人間関係について奇妙な思索を重ねていく。論理と感覚、現実と幻想が入り混じる中で続く三日間の旅路。風変わりな視点から世界を見つめ直す、思索と冒険の物語。
ご購入について
催事名:文学フリマ東京42
場所:東京ビッグサイト南1-4
サークル名:思想・哲学・文学・芸術の会
価格:1,000円
代表編集長:真庭骨丸
